もうそろそろ梅雨になりそうですね。庭の紫陽花の花も色づき始めています。私の住む京都嵐山には、地元の人しか行かない蛍の名所があり、いつそこに蛍を見に行くか、天気と月の満ち欠けを伺いながらチャンスをうかがっています。雨が降っていない曇りの日、月のない新月の夜がいいのです。
さて、5月21日にMLDセラピストカフェの会を開催しました。
この会は、当センターでMLDの勉強をして下さった方々とセンター講師が参加し、お互いの情報を共有、相談、学び合うことを目的としたフォーラムです。クライアントや患者にMLDを施行し、役立てて喜んでいただいているセラピストの皆さんに、その成果を仲間に発表していただくことも行っています。今回は4名のセラピストの方々にパワーポイントを使って症例発表をしていただきました。
今回は来校参加、オンライン参加、発表者合わせて50名近い盛況のフォーラムとなりました。
発表について簡単にご紹介させていただきます。症例発表は一つのケースとしての紹介であり、MLDの効果をお約束したり、謳うものではありません。
発表1 主訴:膝の関節痛
発表者:自宅サロン開業セラピスト
研究協力者:筋トレ中に左ひざに痛みが出現して以来、特に仕事中や階段の昇降時など、動作時の痛みが3か月前から継続している。
痛みの出現から研究期間中を通じて、主訴に対する医療的介入はなし。20日間の間に5回施術を行い、0~10のNRS主観的痛みスケールで施術開始時、6~7あったものが研究終了日までに動作時の痛みは0.5まで改善、その4日後には0になった。
研究協力者は研究前からずっと高血圧症の薬を服用しており、症例期間中もその薬の投薬は継続。その血圧にも症例開始前と比較して終了時では改善が見られたことについて、発表者は高血圧症がMLDの適用であることを指摘し、その結果である可能性を述べています。
発表2 主訴:テニス肘の痛み
発表者:リラクゼーションサロン経営セラピスト
研究協力者:研究前から同サロンにてアロマセラピートリートメントを受けるために通ってくださっているクライアント。4か月前に右ひじの痛みを訴え、右肘関節の外側上顆炎(テニス肘)と診断される。カップを持ったり、肘を曲げたりすると痛いため、日常動作に支障が出ている。
発症より月に1回のペースで患部へのステロイド剤注射を4回受けたが、数日で痛みがぶり返し、右上肢の動作時に痛む。 これ以上のステロイド注射は出来ないとの医師の判断により、湿布、飲み薬(非ステロイド系鎮痛消炎剤)に切り替えたが症状の改善は見られない。
右ひじをかばう為に、左上肢への負担が増大し、左肩関節の動作時の痛みと可動域制限も見られる。
約5週間にわたり、1週間に1回程度のペースで計9回の施術を行った。結果、テニス肘の痛みはNRSで3から0.5に改善。また、左肩関節の痛みも4から0.5へと改善し、動作時の右ひじの痛みが消失、肩関節の可動域も日常動作が問題なく行えるレベルに改善した。
発表者によると、クライアントは症例研究終了後も、続けてサロンに通っていただいているが、途中、一か月ほどサロンに通えなくなったときには症状が悪化したため、MLDの効果を実感している。また、症例研究中は回を重ねるにつれて痛みがやわらいでいる日数が伸びていた。
主訴:ひどい便秘
発表者:整形外科クリニックに勤務する理学療法士
研究協力者:20年以上続く便秘があり、下剤や漢方薬を日常的に使用し、便秘の改善に向けて様々な努力を続けてきた。腰痛の治療として外来のリハビリに週に1回通われている患者様の為、来院時に腰痛リハビリ20分、MLD腹部20分と、MLDの施術時間としては短時間ではあるが、計6回のMLDを行った。
2回目までは目立った改善は見られなかったが、3回目の後より、排便がない時に常用していた漢方薬の使用頻度が減ってきた。4回目以降は施術日の翌朝はスムーズに排便があり、漢方薬も飲まない日がほとんどとなってきた。研究は6回で終了したが、その後もリハビリの通院の日にはMLDの腹部の施術を続けたいと希望されている。
研究者は、週に一回、20分の短い施術時間で長年の頑固な便秘が解消されてきていることに手ごたえを感じている。
ターミナルケア・廃用性浮腫・静脈吻合手術後の方々に対するMLDの体験報告
発表者:訪問看護ステーションに勤務し、リンパ浮腫患者への訪問治療を行っている。自宅療養されているリンパ浮腫の患者はガンの終末期でリンパ浮腫も進行しているケースや廃用性浮腫のある高齢者のケースが多い。リンパ浮腫治療はMLDだけではなく、圧迫療法が重要な日常のケアとなるが、高齢者においては、着脱時、手の力が必要となる弾性着衣の装着や、弾性包帯を巻くことなどを自分で行うことが難しい場合も多く、浮腫のコントロールが難しい。そのなかで、様々なタイプの弾性着衣を用いて浮腫やリンパ漏のケアなどを行っている様子を紹介していただいた。リンパ浮腫のコントロールには患者は肥満予防の指導も重要です。また、ターミナルケアでは死を目前にした患者の心のケアも重要であるが、アロマセラピストとしての資格もある発表者は、患者の好みに合った精油の香りを香らせたるなど、患者に寄り添ったホリスティックなケアを行っている。
まとめ
今回の症例報告会でも、ボッダー式MLDを使うことで、多くの患者さんやクライアントさんに喜んでいただけていることは本当にうれしいことです。
ボッダー式MLDは線維化したリンパ浮腫への施術の場合を除き、とてもソフトな手技を用いるため、強いのがマッサージであるという世間の一般常識や、経験の少ないセラピスト自身が「こんなにソフトで効果があるのか?」という思いにとらわれて自信を失ってしまいがちですが、同じMLD仲間の症例研究を見て、聞くことで、自信を取り戻していただけたらと思っています。
とにかく、実践すること、この積み重ねが手技の向上と、こんなに軽くても結果を出せるという自信とに繋がります。これ以外に近道はないけれど、一人の発表者がおっしゃっていた「効果が出れば出るほど、面白くなってハマります!」は本当ですね。